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「節電」ではなく「電力不買運動」です

2011911

宇佐美 保

 

 「原発が止まったから電力不足だ!節電しろ!」さもないと「停電だぞ!」の脅しをかけられながらの(びくびくと震えながらの)暑い夏が、停電もなく過ぎて行きます。

 

 私は先の拙文≪電力30%を担う原発を廃止すると電力不足になるとの欺瞞≫で、京都大原子炉実験所の小出裕章助教の題名通りの御見解を紹介させて頂きました。

更には、≪「原発がなければ停電する」の嘘を暴かれる広瀬隆氏≫に於いては、広瀬隆氏の題名通りの御見解を紹介させて頂きました。

その上、朝日ニュースターの「パックインジャーナル」との番組中でも、同様の趣旨を、脱原発やリサイクルの運動を出発点に、環境、経済、平和などの、さまざまなNGO活動に関わっておられる田中優氏も発言されておられました。

 

愛川欽也氏(その番組の司会者)は、“電気は足りているというのに「節電」「節電」と上から命じられ、「全員右へ習え!」をしてしまうのは、戦時中の灯火管制等を思い出して嫌です。電気は余っているのだから、どんどん使えば良いのに!”と苦言を呈していました

 

でも、私は愛川氏のご意見には反対なのです。

私は、「自家発電企業からの買電」等の対策実施を検討(その結果の公開)もせずに、悪名高い「計画停電」を実施したり、「原発なくしては電力不足」を私達の頭の中にたたき込んだりした、東電をはじめとする各電力会社の罪(少なくとも「人道に対する罪」)は厳しく追求されるべきです。

その一つの手段として、「節電」ではない「電力不買運動」を、夏が終わろうと、私はささやかながら実行しているのです。

 

 この「自家発電企業からの買電」に関しては先ずは、『日本経済新聞(2011.5.4)』の記事「発送電、分離求める産業界……」の一部を次に抜粋させて頂きます。

 

……石油コンビナートや製鉄所、製紙など電力使用量が多い素材系の企業の多くは大型の自家発電設備を持つ。福島第1原子力発電所の事故発生直後から、こうした企業は経済産業省に「余剰電力の供出」を要請され、自家発電の稼働率引き上げに駆けずり回ってきた

 だが肝心の東電から正式な協力要請がこない企業も多い。

 東電は「異業種からの電力購入は最小限に抑える」(幹部)方針。……

 

 

 いかがでしょうか?!

東電が、大型の自家発電設備を持つ企業から電気を買えば、「計画停電」は実施しなくて良かったのです。

あくまでも、東電からの“原発なくしては、電力不足”の脅しとして「計画停電」が実施されたのです。

 

 そして、この「自家発電からの買電」が行われれば、原発は全く不要となるのです。

この件は、広瀬隆氏の次なる記述を御参考にして下さい。

 

 現在の反原発運動についてひと言申し上げます。     広瀬 隆

 

電力会社の原発はほぼ5000kWだが、今夏のピーク時には、福島第一が廃炉になり、福島第二、東通、女川、東海第二が全滅し、浜岡が停止、柏崎刈羽が3基再起不能で停止、さらに全土で定期検査中の原発が運転再開不能のため、事実上1300kWしか稼働しない状況にある。

 この頼りない原発より、資源エネルギー庁が公表している産業界の保有する自家発電6000kW(昨年9月現在、……)のほうが、はるかに大きなバックアップとしての発電能力を持っている。

……多くの人が抱いている「自然エネルギーで代替しなければ原発を止められない」という現在の反原発運動の固定観念は、まったくの間違いである。

 将来のエネルギー構成をどうするべきかについてはここで論じないが、原発を止めるのに、選択肢の一つである自然エネルギーは、今のところ特に必要ではない。つまり、産業界を味方につけて自家発電をフルに活用し、原発を止めることのほうが、もっと重要である。

週刊朝日610日号で私が特集したように、週刊朝日の記者が各電力会社に取材した結果、興味深い電力需給について裏の構造が明らかになった。全国で、電力会社が他社受電の発電能力を秘密にして、取材にも答えようとしなかった。……

なぜ電力会社は、これら当たり前の事実を隠そうとするのか、という疑問から、ここで重大なことが明らかになった。

 それは、「電力会社が自家発電をフルに利用すれば電力不足が起こらない」、この事実を国民に知られると、産業界からも、一般消費者からも、「送電線を自家発電の民間企業に解放せよ!」という世論が生まれる。そして制度が改善されて、誰もが送電線を自由に使えるようになると、地域を独占してきた電力会社の収益源の牙城が崩れる。送電線の利権だけは、何としても電気事業連合会の総力をあげて死守する必要がある、と彼らは考えている。九つの電力会社にとって、福島原発事故を起こした今となっては、原発の確保より、送電線の確保のほうが、独占企業としての存立を脅かすもっと重大な生命線である。そのため、自家発電の電気を買い取らずに、「15%の節電」を要請するという行動に出てきたのである。

したがって日本人は、「自然エネルギーを利用しろ」と主張する前に、「送電線をすべての日本人に解放せよ!」という声をあげることが、即時の原発廃絶のために、まず第一に起こすべき国民世論である。何しろ、送電線が解放されて、安価に送電できなければ、自家発電ばかりでなく、自然エネルギーの自由な活用もできないのだから。

 原発廃絶は、反原発運動の自己満足のために実現されるべきものではない。産業界も含めた、すべての日本人のために進められるべきである。

 

 

 この豊富な「自家発電」を利用すれば東電は「計画停電」を実施する必要はなかったのです。

なのに実施しました。

この件に関して「使えない「埋蔵電力」、東電の供給量に匹敵 』日経新聞5/15」の記事を「じゅんぼうの徒然雑記から抜粋させて頂きます。

 

……全国の企業が持つ自家発電を足し合わせると、発電能力は6000万キロワット。東京電力の供給量に匹敵する巨大な「埋蔵電力」の存在だ。電力は本当に足りないのか、使えないだけなのか、だとすれば何が問題なのか──。

 

 東京都港区の雑居ビル4階にある日本卸電力取引所(JEPX)。大手電力会社や新規参入の電力事業者が余剰電力を融通しあう「電気のマーケット」で、東京エリアの取引が停止したままという異常事態が9週間も続いている。震災で被害を受けた東京電力が、自社の電力供給が不安定なことを理由に、取引所で約定した電力の送電受託(託送)を再開しないためだ

……

「おたくから買えば停電を避けられるのか」──。PPS(特定規模電気事業者)大手のダイヤモンドパワー(東京・中央)には3月の計画停電のさなか、メーカーやオフィスビルからの問い合わせが殺到した。PPSは電力各社や工場の自家発電設備などから電気を仕入れて、工場やスーパーなどに売るいわば電力の小売業者だ。

 

 東電分が足りなくなったらPPSから買えばいいと誰もが考えたわけだが残念ながら答えは「ノー」。電力会社が送電網というインフラを一手に握る「弊害」がここにも表れた

 

 計画停電など非常時のPPSの扱いは、家庭など一般ユーザーと同じ。これでは手持ちの電力を自由に販売する経路を絶たれた小売りの出る幕はなくなる。PPSが電力会社に支払う送電線の賃借料は海外に比べて割高との指摘も多い。賃借料はPPSが顧客に販売する電力の料金の約2割を占める。

 

 NTTグループなどが出資するエネット(東京・港)は、200万キロワット規模(筆者注:大型原発2基分)を供給するPPS最大手。電力自由化の推進を主張するNTT出身の武井務社長は「送電網を電力会社が握ったままでは独占時代と変わらない」と指摘する。

……

 今回の電力不足問題は、発送配電の一体経営に基づく地域別独占という電力供給のゆがみを改めて浮き彫りにした。いま電力不足対策づくりに追われる経産省の中堅幹部はこう話す。「賠償が一段落したら、次は電力の供給体制の見直し。電力各社の『私道』である送配電網を、もっと自由に行き来できる『公道』に変えないと……」

 

 

 「賠償が一段落したら……送配電網を、もっと自由に行き来できる『公道』に変えないと」ではなく「賠償金の支払いの為に、東電の送電網を売却し、『送電網を公道』に変えるべきです。

(そうすれば、賠償金を電気料金へ上積みする必要はないのでは?)

 

 それでも、「自家発電からの買電」が行われれば、電気料金が高くなる?(又、電力不買運動などしたら、その分、電気料金の値上げが?)と心配される方も居られましょうが、次の『東京新聞(2011.8.24)』記事(一部抜粋)をご覧ください。

 

 

……

欧米の電力自由化の流れを受け、日本でも二〇〇〇年三月から電力各社が独占してきた電力の小売りが一部自由化された。エネットは、その小売り事業に新規参入した特定規模電気事業者(PPS)の一つ。

……

 同社は、自前の液化天然ガス(LNG)発電所や火力発電所で発電し、販売する。いわば東京電力とは異なり、原発で作られた電気は全く入っていない。

 「脱原発依存」が足踏みする中、こうした取り組みは一足早い「脱発」と言えるだろうか。

……

 近くには電力行政の総元締で「原発推進」の司令塔だった経済産業省の庁舎がそびえる。だが、ここでも東電から電気を買っていなかった。

 小売り自由化の00年度にいち早くPPSに転換し、本年度は昭和シェル石油(港区)と契約している。

 昨年度は丸紅(千代田区)と契約し、年間の電力使用量は千二百万キロワット時、料金は一億六千八百万円だった。担当者は「年ごとに単価が変わるので一概には比べられないが、東電と比べて、使用量や料金で二〜三割の削減ができている」と明かした。

 別の省庁では、中堅の男性職員がPPSについて「個人的な意見」と前置きした上で「クリーンな電力を使えることに加え、公平性を図るためにも必要」と指摘。暗に脱東電″ともとれる思いをにじませた。

……

 霞が関の省庁全体ではどうか。調べると、合同庁舎など十六の施設から回答があり、東電の電気を使っているのは二施設で、残り十四施設はPPSだった……。

エネットは九施設に電力を供給している。同社は全国四十六社のPPSの総販売電力量の50%以上を占める最大手だ。

 PPSから電力を購入している省庁はどこも、脱原発の政策的な関連は否定し「入札で電気料金が安かった」 「価格競争」を理由にしている。

……

 

 

 首相の座を追われた菅直人氏に、もはやそのドンキホーテぶりの行動が期待できなくなった今、電力に関しては「節電」と言う名目のもと街灯も消えた『暗い夜道』をとぼとぼと歩み続けるしかないのでしょうか!?


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